電子契約にすると印紙代はいくら浮く?契約書の種類別・年間試算と紙のままでも減らす方法

契約書を電子化すると、収入印紙が不要になる。

この話は広く知られるようになりましたが、「では自社の場合、実際に年間いくら浮くのか」まで計算したことのある方は、意外と多くありません。

先に結論をまとめます。

  • 電子契約に印紙税はかかりません。 印紙税は「文書」に課される税金で、電磁的記録は文書に含まれないためです
  • ただし、電子で送ったあとに紙の現物を交付すると、その紙には印紙が必要になります
  • 浮く金額は「契約の種類 × 件数 × 自社の負担割合」で決まります。 建設工事の請負が多い会社ほど大きく、金額の小さい契約が中心なら思ったほどでもありません
  • 紙のままでも印紙代を減らせる合法的な方法があります

この記事では、印紙税額の根拠を国税庁の資料で確認しながら、業種別の年間試算、導入判断の損益分岐、そして「電子化しない場合の節約策」まで解説します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する税務・法務上の助言ではありません。印紙税額は契約書の記載内容によって判定が異なり、号の判定には専門的な検討を要する場合があります。個別の判断については、所轄の税務署または弁護士等にご相談ください。記載の税額・制度は2026年7月1日時点の情報に基づきます。本記事の情報に基づく判断・行動により生じた損害について、当サイトは責任を負いかねます。

なぜ電子契約に印紙がいらないのか——根拠を確認する

まず、ここを曖昧にしたまま導入判断をするべきではないので、法的な根拠から整理します。

印紙税は「文書」に対する税金

印紙税は、印紙税法の別表第一(課税物件表)に掲げられた文書を作成した人に課される税金です。課税されるのは契約そのものではなく、契約を証する紙の文書に対して、という建て付けになっています。

そして、課税文書の「作成」とは何かについて、印紙税法基本通達では、単に文書を調製する行為ではなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを文書の目的に従って行使することとされています。相手方に交付する目的の文書については交付した時が「作成の時」です。

国税庁の見解

国税庁の質疑応答事例では、取引先にメールで送信した電磁的記録について、印紙税の課税対象となるのは課税物件表に掲げられている文書であり、電磁的記録は文書に含まれないとして、印紙税は課税されないという見解が示されています。

さらに、福岡国税局の文書回答事例(請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の取扱い)では、より踏み込んだ説明がされています。要旨をまとめると、注文請書を作っただけでは足りず、現物の交付がなされない以上、電磁的記録に変換して送信してもファクシミリと同様に課税文書を作成したことにはならず、課税原因が発生しないという整理です。

「あとから紙で渡す」と課税される

同じ文書回答事例には続けてこう書かれています。

電子メールで送信した後に、注文請書の現物を別途持参するなどの方法で相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当し、その現物に印紙税が課される。

実務でいちばん取りこぼしやすいのがここです。

「電子契約に切り替えました」と言いながら、「念のため紙の控えもお渡しします」という運用が残っていると、その紙に印紙が必要になります。社内で完結する印刷・保管は問題ありませんが、相手方に紙の現物を渡した瞬間に課税されるという線引きを、現場まで共有しておく必要があります。

条文に「電子契約は非課税」とは書いていない

念のため付け加えておきます。

印紙税法に「電子契約は非課税とする」と明記した条文があるわけではありません。あるのは、「課税対象は文書である」という条文と、「電磁的記録は文書に含まれない」という解釈です。

現時点でこの取扱いは国税庁の公表資料で明確に示されており、実務上も定着していますが、将来の税制改正で扱いが変わる可能性がゼロだとは言えません。電子契約の導入を「印紙代がゼロになるから」という一点だけで判断すると、制度が変わったときに前提が崩れます。後述する印紙代以外のメリットも含めて判断するのが健全です。

契約書の種類別・印紙税額はいくらか

「浮く金額」を計算するには、まず自社の契約書に貼っている印紙の額を把握する必要があります。主要なものを整理します。

請負に関する契約書(第2号文書)——本則

工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、会計監査契約書など。警備・機械保守・清掃といった役務の提供も、仕事の完成を目的とするものは請負に含まれると想定されます。

契約金額税額
1万円未満非課税
1万円以上 100万円以下200円
100万円超 200万円以下400円
200万円超 300万円以下1,000円
300万円超 500万円以下2,000円
500万円超 1,000万円以下1万円
1,000万円超 5,000万円以下2万円
5,000万円超 1億円以下6万円
1億円超 5億円以下10万円
契約金額の記載のないもの200円

(国税庁タックスアンサーNo.7102より。5億円超はさらに高額になります)

建設工事の請負契約書——軽減措置後

建設業法にいう建設工事の請負契約で、契約金額が100万円を超えるものは、軽減措置の対象です。

契約金額軽減後の税額
100万円超 200万円以下200円
200万円超 300万円以下500円
300万円超 500万円以下1,000円
500万円超 1,000万円以下5,000円
1,000万円超 5,000万円以下1万円
5,000万円超 1億円以下3万円
1億円超 5億円以下6万円

本則の半額前後になっているのが分かります。

この軽減措置の適用期間は、令和9年(2027年)3月31日までです。 平成26年4月1日から始まり延長が繰り返されてきたものですが、恒久措置ではありません。

不動産の譲渡に関する契約書(第1号の1文書)——軽減措置後

契約金額が10万円を超えるものが対象で、こちらも令和9年3月31日までです。

契約金額軽減後の税額
10万円超 50万円以下200円
50万円超 100万円以下500円
100万円超 500万円以下1,000円
500万円超 1,000万円以下5,000円
1,000万円超 5,000万円以下1万円
5,000万円超 1億円以下3万円
1億円超 5億円以下6万円

継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)は一律4,000円

売買取引基本契約書、下請基本契約書、代理店契約書など、特定の相手方と継続的に生じる取引の基本条件を定める契約書です。契約金額にかかわらず1通4,000円です。

見落としやすい注意点が2つあります。

ひとつは、契約期間が3か月以内で、かつ更新の定めがないものは第7号文書から除かれるという点。もうひとつは、金額の記載がない基本契約書に「200円でいいだろう」と貼ってしまう誤りが実務で散見されることです。第2号文書と第7号文書のどちらに該当するかは判定ルールがあり、金額の記載のない基本契約書は第7号(4,000円)になることがあります。

判断に迷う契約書は、税務署や弁護士等に確認してください。号の判定は印紙税でいちばん間違いが起きやすい部分です。

年間でいくら浮くのか?3つの試算例

実際の金額感を掴むために、モデルケースで計算してみます。

① 工務店(建設工事の請負が中心)

1件あたりの契約金額が800万円、月8件のペースで契約するとします。軽減措置により1件5,000円。

5,000円 × 96件 = 年間48万円

② 制作会社(業務委託の請負が中心)

1件400万円の業務委託契約。建設工事ではないので軽減措置の対象外で、本則の2,000円。月5件とすると、

2,000円 × 60件 = 年間12万円

③ 卸売業(基本契約書が中心)

取引先ごとに継続取引の基本契約書を締結。第7号文書で1通4,000円。年間40社と新規・更新の契約を結ぶとすると、

4,000円 × 40件 = 年間16万円

契約の「型」によって、桁が変わることが分かると思います。建設工事の請負を数多く扱う会社ほど、電子化のインパクトが大きいというのが結論です。

逆に、契約金額が100万円以下(印紙200円)の契約が中心なら、年間の印紙代は数万円程度にとどまることも珍しくありません。

全額が自社の節約とは限らない

ここは他の解説記事であまり丁寧に書かれていない部分なので、詳しく説明します。

契約書を2通作成して当事者が1通ずつ保管する場合、それぞれの契約書について印紙が必要です。つまり合計2通分の印紙税が発生します。

そして印紙税法では、1つの課税文書を2者以上が共同で作成した場合、その者たちは連帯して印紙税を納める義務を負うとされています。誰が実際に負担するかは当事者間の取り決めの問題で、実務上は「各自が自分の保管する1通分を負担する」「折半する」といった慣行が一般的です。

したがって、電子化によって世の中から消える印紙税は2通分でも、自社の帳簿から消えるのは自社が負担していた分だけです。

先ほどの工務店の例で、双方が1通ずつ負担していたなら、自社の節約額は48万円ではなく24万円前後になります。逆に、慣行として自社が全額負担していたなら48万円まるごとです。

まず「自社が実際にいくら払っているか」を確認してください。 経理の印紙購入額(貯蔵品の払出額)を1年分見れば、ほぼ正確な数字が出ます。試算より現実の帳簿のほうが確実です。

導入するかどうかの損益分岐

判断式はシンプルです。

年間の印紙代(自社負担分)+ 印紙以外の削減額 > 電子契約サービスの年間費用

なら、導入で得になります。

電子契約サービスの費用は、月額基本料に加えて送信1件あたりの従量課金という料金体系が一般的です。仮に月額1万円(年12万円)+送信料が1件100〜200円程度だとすると、

  • 工務店の例(自社負担24万円、年96件)→ 費用は年間14万円前後。差し引きプラス
  • 制作会社の例(自社負担6万円、年60件)→ 費用は年間13万円前後。印紙代だけでは赤字

制作会社のケースのように、印紙代だけを見ると導入コストを回収できないパターンは普通にあります。ここで「それでも導入すべきか」を分けるのが、印紙以外の効果です。

印紙代以外に減るもの

  • 郵送費と手間:往復の郵送、封入、切手代。1件あたり数百円でも件数分積み上がります
  • 契約締結までの日数:郵送での製本・押印・返送に1〜2週間かかっていたものが、当日〜数日になります。着手が早まる効果は金額に換算しにくいものの、実務では大きい
  • 印紙の購入・保管・管理:金券である収入印紙の在庫管理は、それ自体が経理の手間であり、内部統制上のリスクでもあります
  • 保管コストと検索性:契約書のファイリング、保管スペース、「あの契約書どこ?」の探索時間
  • 貼り忘れによる過怠税のリスク:印紙を貼らずに調査で指摘されると、本来の印紙税額とその2倍に相当する金額の合計(つまり3倍)を過怠税として納めることになります。調査を受ける前に自主的に申し出た場合は1.1倍に軽減されます。電子化すれば、このリスク自体が消えます

号の判定を誤って4,000円貼るべきところに200円貼っていた、という誤りは珍しくありません。

紙のままでも印紙代を減らす方法

「電子契約の記事なのに」と思われるかもしれませんが、導入しない選択をする会社もあるので、公平に書いておきます。合法的に印紙代を減らす方法は、実はいくつかあります。

① 消費税額を区分して記載する

契約書に消費税額が区分して明記されていれば、その消費税額は記載金額に含めなくてよいとされています。

たとえば請負契約で「請負金額 5,500,000円(うち消費税額 500,000円)」と書けば、記載金額は500万円。区分記載がなく「5,500,000円」とだけ書けば、記載金額は550万円です。

先ほどの建設工事の軽減後の表を見ると、500万円以下は1,000円、500万円超1,000万円以下は5,000円。書き方ひとつで4,000円変わります

これは節税テクニックというより、正しい記載をすれば正しい税額になるという話です。契約書の書式を一度見直す価値があります。

ただし、注意点もあるので必ず税理士等に確認をして行ってください。

② 契約書を1通だけ作成し、もう一方は写しを保管する

契約書を1通だけ作成して一方が原本を保管し、他方はそのコピーを持つという運用にすれば、印紙は1通分で済みます。

単なるコピーは課税文書には当たらないのが原則ですが、注意点があります。そのコピーに当事者が署名・押印したり、「原本と相違ない」旨の証明をしたりすると、契約の成立を証する文書として課税対象になり得ます。「コピーはあくまでコピーとして扱う」運用を徹底する必要があります。

③ 基本契約の期間設定を見直す

第7号文書は、契約期間が3か月以内で更新の定めがないものは除かれます。取引の実態に照らして無理のない範囲であれば、契約期間の設計を検討する余地があります。

もっとも、印紙代4,000円のために取引実態に合わない契約期間を設定するのは本末転倒です。あくまで、実態に合っているなら、という前提の話です。

電子契約にするときの注意点

印紙以外の論点も押さえておきます。

建設工事の請負契約は、相手方の承諾が必要です。

建設業法では、建設工事の請負契約について契約内容を記載した書面の交付が義務づけられていますが、その第19条第3項により、あらかじめ契約の相手方の承諾を得たうえで、電磁的措置によることが認められています。

つまり、建設業者が一方的に電子契約を送りつけても、書面交付義務を果たしたことにはなりません。承諾はメールやシステム上の同意取得でも構いませんが、事前に取得することと、記録に残すことが重要です。国土交通省もガイドラインを公表していますので、建設業の方は導入前に確認してください。

相手方が対応できるかどうか。

自社が導入しても、相手方が「紙でお願いします」と言えば紙になります。取引先の構成によっては、紙と電子の二本立て運用がしばらく続くことを前提に考えたほうが現実的です。

電子帳簿保存法の保存要件。

電子で締結した契約書は、電子データのまま保存する必要があります。多くの電子契約サービスは要件を満たす形で保存機能を備えていますが、自社で保存する場合は要件の確認が必要です。

押印の意味そのものについて。

そもそも押印は契約の成立要件ではありませんが、紙の契約書では押印が証拠としての機能を担ってきました。電子契約では電子署名がその役割を引き受けます。この点は実印・銀行印・認印の違いを解説した記事で押印の法的な意味に触れていますので、あわせてご覧ください。

サービスごとの比較は、別記事で詳しく扱う予定です。

よくある質問

Q. 電子契約なら本当に印紙は1円もかかりませんか?

電磁的記録のままやりとりする限り、印紙税はかかりません。紙の現物を相手方に交付した場合は、その紙に印紙が必要です。

Q. PDFをメールで送るだけでも印紙は不要ですか?

国税庁の見解に照らせば、現物の交付がない限り課税原因は生じないという整理になります。ただし、契約の証拠力という別の問題があります。印紙税がかからないことと、契約書として十分な証拠力があることは別の話です。

Q. 印紙を貼り忘れた契約書は無効ですか?

無効にはなりません。印紙税を納めていないことと、契約の効力は別です。ただし過怠税の対象になると考えられます。

Q. 契約書を作り直したら、また印紙が必要ですか?

契約内容を変更する文書も、変更の内容によっては課税文書になります。増額変更なら増額分が記載金額になるなど、判定は細かいので、変更契約書が多い会社は一度整理しておくとよいでしょう。また、顧問の弁護士等に確認してみましょう。

Q. 領収書も電子化すれば印紙が不要になりますか?

考え方は同じです。紙の領収書は第17号文書として課税されますが(受取金額5万円未満は非課税)、電子データで発行する場合は文書の交付がないため課税されません。契約書より件数が多いぶん、業種によってはこちらの節約額のほうが大きいこともあります。

まとめ

  • 電子契約に印紙税がかからないのは、印紙税が「文書」への課税であり、電磁的記録は文書に含まれないから。国税庁の質疑応答事例および文書回答事例で示された取扱いです。ただし、電子で送ったあとに紙の現物を相手方に交付すると、その紙には印紙が必要になります
  • 建設工事の請負と不動産譲渡の契約書には軽減措置がありますが、令和9年3月31日までの期限付きです
  • 浮く金額は「契約の型 × 件数 × 自社の負担割合」。まず経理の印紙購入額を1年分確認するのが最短
  • 印紙代だけでは元が取れないケースもある。郵送費、締結までの日数、印紙の管理コスト、過怠税リスクまで含めて判断する
  • 電子化しなくても、消費税額の区分記載などで印紙代を減らせる場合がある
  • 建設工事の請負契約を電子化するには、あらかじめ相手方の承諾が必要(建設業法第19条第3項)

近年は電子契約が一般化してきていますので、もしまだ電子契約を導入していない場合は検討してみてもよいでしょう。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する税務・法務上の助言ではありません。印紙税額は契約書の記載内容によって判定が異なり、号の判定には専門的な検討を要する場合があります。個別の判断については、所轄の税務署または税理士にご相談ください。記載の税額・制度は2026年7月時点の情報に基づきます。本記事の情報に基づく判断・行動により生じた損害について、当サイトは責任を負いかねます。

執筆者情報

樋口智大(行政書士)

アロー行政書士事務所の行政書士。
ドローン飛行許可申請や酒類販売業免許申請、古物商許可申請等の許認可取得のサポートをしています。
行政書士になってから紙・電子含めて印鑑と向き合う機会が増えました。また、酒類販売業免許をやっていると海外取引に触れる機会も多いことから、印鑑文化が海外では通用しないこと(サインが基本等)など、印に対するさまざまな経験をしたことにより、逆に興味を持つようになり、このような印鑑に関するブログを運営しております。歴史な好きなこともあり、家紋についても解説しております。