書類を書き間違えたときは「二重線を引いて訂正印を押せばいい」とよく言われます。
ただ、印をどこに押すのか、欄外に何か書く必要があるのか、契約書なら相手の印も要るのかなど、迷うケースも多いかと思います。
多くの書類では間違えた箇所を二重線で消して正しい内容を書き、二重線にかかるように訂正印を押すか、欄外に「削除○字 加入○字」と書いてその部分に押す方法が一般的とされています。
提出先の案内があればそれが優先です。
一部の書類では訂正のしかたが法令で具体的に決まっています。
それ以外の書類の訂正は、提出先の案内や慣行に沿って行われていることが多いようです。
この記事では訂正印の基本的な押し方と法令で決まっている訂正の方法、契約書で双方の印が必要かどうかを整理します。
あとから相手が直せるように先に押しておく「捨印」については、別記事「捨印とは?捨印の意味と押す理由・訂正印との違い・由来について解説!」で詳しく解説しています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。記事中の法令の規定は2026年10月12日時点でe-Gov法令検索に掲載されている内容に基づいています。自筆証書遺言の訂正方法(民法968条3項)は令和8年6月24日公布の民法等の一部を改正する法律により押印が任意となることが決まっており、施行日は政令で定められます。施行後は記事の説明と取扱いが変わります。書類の訂正方法は提出先の官公庁・裁判所・金融機関などによって運用が異なり、記事で紹介した裁判所や区の案内もそれぞれの機関の手続きについてのものです。実際に訂正する際は提出先の案内をご確認ください。遺言書のように方式を誤ると効力に影響する書類については専門家への相談もご検討ください。本記事の内容に基づいて生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。
訂正印とは
訂正印は書類の記載を直したときに、その訂正が書類を作った本人(契約書なら当事者)の意思によるものであることを示すために押す印とされています。
たとえば松江地方裁判所民事部の案内では、同裁判所に出す書類の印は認め印でよいとしたうえで、同じ事件では同じ印鑑を使うよう求めています。
契約書などでは署名押印に使ったのと同じ印で訂正するのが一般的とされています。
なお訂正印に浸透印(インクが内蔵された印)を使ってよいかについては、別記事「シャチハタはなぜダメ?OKな書類もある?押印でNGな理由とゴム印と朱肉印(実印等)の違いについて」で解説しています。
一般的な訂正印の押し方
訂正のしかたが法令で決まっていない書類では、一般的には次の手順で直すことが多いとされています。
- 間違えた部分に二重線を引く。元の文字が読めるように残し、修正液や修正テープは使わない
- 二重線の近くの余白に正しい内容を書く
- 訂正印を押す
訂正印を押す場所には主に2つのやり方があります。
①:二重線にかかるように押す方法です。松江地方裁判所民事部の案内はこの方法で、修正液などを使った訂正はしないよう求めています。
②:欄外に「削除○字 加入○字」のように直した字数を書き、その字数を書いた部分に押す方法です。後で紹介する不動産登記規則45条2項が定める方法の一つと同じ形です。
どちらにするかは提出先の案内があればそれに従ってください。
案内がない場合はどちらの方法でも、どこを直したかと誰が直したかが分かるようにしておくことが大切だと考えられます。
なお不動産登記規則45条2項は、直した文字を「なお読むことができるように」しておくよう定めているだけで線の本数までは決めていません。二重線が広く使われているのは元の文字が読めることと消したことが一目で分かることを両立できるからだと考えられます。
法令で決まっている訂正の方法
訂正のしかたを法令で具体的に定めている例として、不動産登記の申請書と自分で書く遺言書があります。
不動産登記の申請書:欄外に字数を書くか記号で範囲を示す
不動産登記規則45条2項は、不動産登記の申請書などで文字の訂正・加入・削除をしたときの方法を定めています。
方法は2通りです。
一つ目は訂正・加入・削除をした旨とその字数を欄外に書き、その字数を書いた部分に押印する方法です。
二つ目は訂正・加入・削除した文字に括弧などの記号を付けて範囲をはっきりさせ、その記号を付けた部分に押印する方法です。
さらに条文では訂正や削除をした文字はなお読むことができるようにしておかなければならないとしています。
元の文字を塗りつぶしたり修正テープで覆ったりすると読めなくなるため、この方法では直せないことになります。
自筆証書遺言:署名まで必要
自分で全文を手書きする遺言書を自筆証書遺言といい、その訂正はさらに厳格です。
現行の民法968条3項は、自筆証書遺言の加除その他の変更について次のすべてを求めています。
- 変更した場所を示す
- 変更した旨を付記する
- その付記に署名する
- 変更した場所に印を押す
そしてこれを守らなければ変更は効力を生じないと定めています。
現行法では訂正印を押しただけでは足りず、署名まで必要だという点がほかの書類と大きく違うところです。
ただしこの規定は改正が決まっています。
2026年(令和8年)6月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)自筆証書遺言の押印要件を廃止し、加除その他の変更の際の押印も任意とすることが決まりました。
法務省の新旧対照条文によると、改正後の968条3項は変更の場所の指示と変更した旨の付記、その付記への署名を求め、押印は求めない規定になります。
この部分の施行日は、公布の日から1年を超えない範囲内で政令で定める日とされています。施行日や施行前に書いた遺言の扱いは、法務省の案内で確認してください。
法令と裁判所の案内を整理すると
| 書類 | 訂正のしかた | 根拠・出典 |
|---|---|---|
| 不動産登記の申請書など | 欄外に訂正・加入・削除をした旨と字数を書いてその部分に押印するか、直した文字に括弧などの記号を付けてその部分に押印する。直した文字は読めるように残す | 不動産登記規則45条2項 |
| 自筆証書遺言 | 変更の場所を示し変更した旨を付記して署名し、変更の場所に押印する(2026年6月公布の改正法の施行後は押印は任意)。守らないと変更は効力を生じない | 民法968条3項(令和8年法律第45号による改正あり) |
| 裁判所に出す書類(松江地方裁判所民事部の案内。法令ではない) | 二重線で消し、二重線にかかるように訂正印を押す。修正液などは使わない | 松江地方裁判所民事部「裁判所に提出する書類の書き方」 |
契約書の訂正に双方の印は必要か
押印は契約の成立に必要な要件ではない
内閣府・法務省・経済産業省が2020年に公表した「押印についてのQ&A」は、私法上(個人や会社どうしの取引のルールの上)では契約は当事者の意思の合致で成立し、書面の作成や押印は特別な定めがある場合を除いて必要な要件ではないと説明しています。
押印が契約成立の要件ではないことからすると、訂正印がないことだけで契約そのものが無効になるわけではないと考えられます。
問題になりやすいのは、訂正後の内容で当事者が合意していたかどうかをあとから示せるかどうかです。
それでも双方が押すのが一般的とされる理由
同じQ&Aは、民事訴訟法228条4項により本人またはその代理人の署名または押印がある私文書は真正に成立したもの、つまり本人の意思で作られたものと推定されることにも触れています。
ただしこの推定は相手方の反証で覆りうる限定的なもので、押印がなくても他の方法で文書の成立を立証できるとも説明しています。
そのうえで、訂正した箇所に当事者全員の印があればその訂正も全員が認めたものだと示しやすくなると考えられます。
反対に一方の印しかないと、もう一方から「その訂正は知らない」と言われたときに訂正にも合意していたことを示しにくくなるおそれがあると考えられます。
このため契約書の訂正では、署名押印した当事者全員が訂正印を押すのが一般的とされています。
金額や期日のように重要な部分を直す場合や訂正が何か所にも及ぶ場合は、訂正印で直すより契約書を作り直したほうがあとで争いになりにくいと考えられます。
押印をやめた書類の訂正はどうするか
2020年以降、国の行政手続きで押印の見直しが進められました。
内閣府の大臣記者会見(2020年11月13日)では、民間から行政への手続きで押印を求めていた14,992種類(添付書類を含む)のうち99%以上にあたる14,909種類で押印を廃止するか、廃止の方向で準備することになったと説明されています。
押印欄がなくなった書類では、訂正印の代わりに何で「誰が直したか」を示すのかが問題になります。
一例として東京都江戸川区の建築指導課は、2021年1月の省令改正で建築確認の申請書などへの申請者等の押印が不要になったことを受けて、申請書(添付書類を除く)を訂正するときは余白に「○字挿入、△字抹消、訂正日、受任者氏名」を書くよう案内しています。
受任者とは委任を受けて手続きを任された人のことです。
同じ案内は設計図などの添付図書には押印しないよう求め、訂正印での補正は認めないとしています。
印の代わりに直した字数・日付・手続きを任された人の名前で、どこをいつ誰が直したかを示す形だと考えられます。
押印をやめた手続きでは訂正の方法も提出先ごとに案内されている場合があるため、まずは提出先の記載例や案内を確認するのが確実です。
まとめ
訂正印は書類の記載を直したときに、その訂正が本人や当事者の意思によるものであることを示すために押す印とされています。
法令で方法が決まっていない書類では、二重線で消して正しい内容を書き、二重線にかかるように訂正印を押すか欄外に字数を書いて押す方法が一般的とされています。提出先の案内があればそれに従ってください。
不動産登記の申請書では、欄外に字数を書いて押印するか記号で範囲を示して押印する方法が不動産登記規則で決まっています。直した文字は読めるように残さなければなりません。
自筆証書遺言の訂正は、現行の民法では変更した旨を付記して署名し、変更の場所に押印しなければ効力を生じないと定められています。2026年6月公布の改正民法の施行後は押印が任意になり、署名は引き続き必要です。
契約書では押印そのものが契約成立の要件ではありませんが、訂正を全員が認めたことを示すために当事者全員が訂正印を押すのが一般的とされています。
押印をやめた手続きでは訂正の方法も変わっている場合があるので、提出先の案内を確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。記事中の法令の規定は2026年10月12日時点でe-Gov法令検索に掲載されている内容に基づいています。自筆証書遺言の訂正方法(民法968条3項)は令和8年6月24日公布の民法等の一部を改正する法律により押印が任意となることが決まっており、施行日は政令で定められます。施行後は記事の説明と取扱いが変わります。書類の訂正方法は提出先の官公庁・裁判所・金融機関などによって運用が異なり、記事で紹介した裁判所や区の案内もそれぞれの機関の手続きについてのものです。実際に訂正する際は提出先の案内をご確認ください。遺言書のように方式を誤ると効力に影響する書類については、専門家への相談もご検討ください。本記事の内容に基づいて生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。
参考・出典
- e-Gov法令検索「不動産登記規則」(第45条) https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- e-Gov法令検索「民法」(第968条) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索「民事訴訟法」(第228条) https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109
- 法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)」概要 https://www.moj.go.jp/content/001465481.pdf
- 法務省「新旧対照条文」 https://www.moj.go.jp/content/001465479.pdf
- 内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」(令和2年6月19日) https://www.moj.go.jp/content/001322410.pdf
- 内閣府「河野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年11月13日」 https://www.cao.go.jp/minister/2009_t_kono/kaiken/20201113kaiken.html
- 松江地方裁判所民事部「裁判所に提出する書類の書き方」 https://www.courts.go.jp/matsue/vc-files/matsue/2020/200221minntatisyosikipdf/1saibansyoniteisyuttusurusyoruinokakikata.pdf
- 江戸川区建築指導課「確認申請等の手続きに係る『委任状』及び『訂正印』等の取扱い」(令和3年3月15日発行、令和6年1月4日一部改正) https://www.city.edogawa.tokyo.jp/documents/1031/ininnjoutoteiseiinn.pdf

